2011年5月アーカイブ

「触媒についての常識は、化学屋の中でも特定の触媒専門家しか知りません。

まして自動車メーカーの中の機械屋さんは失礼ながら全くご存知ない。

ご存知ないから私に『とにかくやってみろ』といわれたのです。

私も、これまでの常識にとらわれないで、『いっぺん挑戦してみようか』という気持になりました。

それからいろいろやってみましたが、やはりなかなかうまくいきません。

ところが機械屋さんたちは、触媒についての先入観がないから、なかなかあきらめません。

『やり方がまずいんじゃないか。あっさりやめないで、もっと頑張れ』と激励してくれます。

私たち化学屋から見れば随分苦しい時期もありましたが、結果的には従来の常識の壁を破り、触媒による排ガス規制に成功しました」

この触媒の誕生でバスやトラック中古車が真っ黒な排気ガスを吹いて走ることはなくなりました。

「排ガスの中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を除去するのに触媒が非常に有効だ、ということは、われわれ化学屋も随分以前からわかっていました。

昭和40年代の初めには、すでにこれに関する多くの特許もありました。

しかし触媒の本来の性質からいって、これは化学工場などのような条件の一定した固定発生源だけで使われるもので、自動車のような環境では、触媒のすぐれた性質を十分に生かして使うのは非常にむつかしい、問題が多すぎる、一筋なわではいかない、と考えられていました。

だから『自動車に触媒を使うことを研究せよ』といわれた時、私は『そんなバカな』と思ったのです」

ですが、技術者たちはこの逆境を乗り越えて、自動車用の触媒を作り上げます。

そのおかげで、現在のトラックや中古車トラックですら煙を上げて走るようなことはなくなったのです。